物質量 

【アボガドロ数と物質量】

原子,分子,イオンといった粒子は非常に小さいので,1個,2個・・・では扱いにくい。そこで,6.02214076×1023個ををひとまとめにして扱う(鉛筆12本をひとまとめにして1ダースというのと同様である)。この値を〔 アボガドロ数 〕といい,この数をひとまとめにして表した量を〔 物質量 〕という。物質量の単位は〔 mol 〕を用いる。また,アボガドロ数に単位[/mol]をつけたものを〔 アボガドロ定数 〕といい,NAで表す。通常,計算問題ではNA=6.0×1023/molを用いる。

 

粒子〔 6.0×1023 〕 = 〔 1mol 〕

例1)Cu原子2molは,何個か。

  1mol = 6.0×1023個なので,

  2mol = 6.0×1023×2 = 1.2×1024

 

例2)Cu原子1.5×1024個は何molか。

  6.0×1023個 = 1molなので,

  1.5×1024個 = (1.5×1024)(6.0×1023) = 2.5mol

 

例題 次の問いに有効数字2桁で答えよ。アボガドロ定数NA6.0×1023/mol

(1) 炭素原子C 1.8×1023個の集団は炭素何molか。

(2) 水素分子H2 3.0molは,何個の水素分子から構成されるか。

(3) 二酸化炭素CO2 0.75molに含まれる二酸化炭素分子の数は何個か。また,酸素原子の数は何個か。

 

(1) 0.30mol (2) 1.8×1024個 (3) 4.5×1023個 O原子:9.0×1023

 

問題演習

(1) (4) の粒子数,(5) (8) の物質量をそれぞれ有効数字2桁で求めよ。アボガドロ定数NA6.0×1023/mol

(1) 炭素C 1.0mol中の炭素原子

(2) ナトリウムNa 0.50mol中のナトリウム原子

(3) 二酸化炭素CO2 1.5mol中の二酸化炭素分子

(4) 塩化カルシウムCaCl2 2.0mol中のカルシウムイオンCa2+

(5) 水素原子H 6.0×1023個  

(6) 銅原子Cu 3.0×1024

(7) 水分子H2O 1.5×1022個 

(8) アルミニウムイオンAl3+ 6.0×1024

 

(1) 6.0×1023個 (2) 3.0×1023個 (3) 9.0×1023個 (4) 1.2×1024

(5) 1.0mol (6) 5.0mol (7) 0.025mol (8) 10mol

 

【物質量と質量】

 相対質量は,質量数12の炭素原子12C1つで1.9926×1023g)の質量を12と定めて,これを基準に他の原子の質量を比で求めたものであった。ここで,12C12g(相対質量と同じg数)集め,その中の12C原子の数を計算すると次のようになる。これはどの物質で計算しても同じ値になり,この値はアボガドロ数とほぼ同じ値になる。(以前は以前はこの値をアボガドロ数と定義していたが,今日では厳密に整数6.02214076×1023をアボガドロ数と定義している)

 
 
 

 つまり,相対質量g中にはアボガドロ数個(1mol)の粒子が存在することになり,物質1molの質量はその物質の分子量や式量にgをつけた値といえる。この1mol当たりの質量を〔 モル質量 〕という。

 物質1molの質量 = その物質の〔 分子量 や 式量 〕g 

 

例)原子量 H1.0O16Na23Cl35.5

 H2ONaCl 1molの質量はそれぞれ何gか。

   H2O 1molの質量 = H2Oの分子量g = 1.0×218 = 18g

   NaCl 1molの質量 = NaClの式量g = 2335.5 = 58.5g

 

HCl  2molの質量は何gか。

   HCl 1molは, 1.035.5 = 36.5g なので,

    2molは, 36.5×2 = 73g

 

 Na2O 31gの物質量は何molか。  

   Na2O 1molは, 23×216 = 62g なので,

   Na2O 31gは, 6231 = 0.50mol

 

例題 次の各問いを有効数字2桁で答えよ。原子量 H=1.0C=12N=14O=16Mg=24Cl35.5Ca40

(1) 黒鉛C 0.40molの質量は何gか。  (2) マグネシウムMg 19.2gの物質量は何molか。

(3) アンモニアNH3 0.50molの質量は何gか。  (4) 酸素O2 24gの物質量は何molか。

(5) 塩化カルシウムCaCl2 222mgの物質量は何molか。また,この中に含まれるCa2Clの合計は何molか。

 

(1) 4.8g (2) 0.80mol (3) 8.5g (4) 0.75mol (5) 0.060mol

 

問題演習

(1) (4) の質量,(5) (8)の物質量をそれぞれ有効数字2桁で求めよ。

原子量 H1.0 C12 N14 O16 Na23 Mg24 S32 Ca40

(1) 黒鉛C 0.20mol  (2) カルシウムCa 0.75mol  (3) 硫化水素H2S 1.5mol

(4) 酸化マグネシウムMgO 0.30mol  (5) ダイヤモンドC 0.12g

(6) マグネシウム4.8g  (7) 二酸化窒素NO2 2.3g  (8) 炭酸ナトリウムNa2CO3 5.3g

 

(1) 2.4g (2) 30g (3) 51g (4) 12g (5) 0.010mol (6) 0.20mol 

(7) 0.050mol (8) 0.050mol

 

 物質量と粒子数,質量の関係をまとめると,つぎのようになる。

粒子の数,物質量,質量の関係 6.0×1023個 = 1mol = 分子量,式量g 

 

 

例題 次の各問を有効数字2桁で答えよ。

原子量 H1.0 C12 O16 Na23 Cl35.5 アボガドロ定数NA6.0×1023/mol

(1) 二酸化炭素CO2 3.0×1023個の質量は何gか。  (2) 水H2O180gに含まれるH2O分子の数は何個か。

(3) 酸化ナトリウムNa2O 124gに含まれるNaの数は何個か。

                                             

(1) CO2 6.0×1023個 ⇔ 1mol ⇔ 1216×244g より,

  CO2 3.0×1023個は,44×3.0×1023(6.0×1023) 22g

 

(2) H2O 6.0×1023個 ⇔ 1mol ⇔ 1.0×2+1618g より,

  H2O 180gは,  6.0×1023×18018 = 6.0×1024〔個〕

 

(3) Na2O 6.0×1023個 ⇔ 1mol ⇔ 23×21662g より,

  Na2O 124gは,6.0×1023×12462 = 1.2×1024〔個〕

  NaNa2O 1つに2つ含まれるので,1.2×1024×22.4×1024〔個〕

 

問題演習

(1) (4) の質量〔g〕,(5) (8) の粒子の数〔個〕をそれぞれ有効数字2桁で求めよ。

原子量 H1.0 C12 N=14 O16 Na23  Mg24  Al27  Fe56

アボガドロ定数NA6.0×1023/mol

(1) 水素原子H 6.0×1023個  (2) 鉄原子Fe 3.0×1023

(3) 水分子H2O 2.0×1022個  (4) アルミニウムイオンAl32.0×1024

(5) ダイヤモンド0.12g中の炭素原子C  (6) マグネシウムMg 4.8g中のマグネシウム原子Mg

(7) 二酸化窒素NO2 2.3g中の二酸化窒素分子NO2  (8) 炭酸ナトリウムNa2CO3 53g中のナトリウムイオンNa

 

(1) 1.0g (2) 28g (3) 0.60g (4) 90g (5) 6.0×1021個 (6) 1.2×1023 

(7) 3.0×1022個 (8) 6.0×1023

 

【物質量と気体の体積】

 同温・同圧のもとで,気体の状態の物質1molが示す体積は,気体の種類に関係なく一定である。これをアボガドロの法則という。とくに標準状態(0℃,1013hPa)では,気体の物質1molが示す体積は〔 22.4 〕Lである。

 

例)標準状態で,二酸化炭素CO2 3.0molの体積は何Lか。

   1molは,22.4Lなので,

3.0molは,22.4×367.2L

 

標準状態で,二酸化炭素CO2 56Lの物質量,粒子数,質量はそれぞれいくらか。(C=12, O=16)

   CO2 6.0×1023個 ⇔ 1mol ⇔ 1216×244g ⇔ 22.4Lより,CO2 56Lは,

    物質量=1×5622.42.5mol〕  

粒子数=6.0×1023×5622.41.5×1024〔個〕

    質量=44×5622.4110g

 
例題 
 次の問い
を有効数字2桁で答えよ。気体はすべて標準状態のものとする。アボガドロ定数NA6.0×1023/mol C12N14O16

(1) メタンCH4 0.25molの体積は何Lか。 (2) 水素H2 11.2Lの物質量は何molか。

(3) 水素H2 5.6L中の水素分子は何個か。 (4) 酸素O2分子7.5×1023個の体積は何Lか。

 (5) 一酸化炭素CO 33.6Lの質量は何gか。 (6) 二酸化窒素NO2 11.5gの体積は何Lか。

 

(1) 5.6L (2) 0.50mol (3) 1.5×1023個 (4) 28L (5) 42g (6) 5.6L

 

問題演習

() () の体積〔L〕,() () の物質量〔mol〕,() ()の粒子数〔個〕,() 〜(ケ)の質量〔g〕を有効数字2桁で求めよ。ただし,気体はすべて標準状態とする。アボガドロ定数NA6.0×1023/mol H1.0He4.0N14S32

() 酸素O2 0.25mol () ヘリウムHe 10g () オゾンO3 7.5×1022

() アンモニアNH3 8.96L () 硫化水素H2S 5.60L   () 二酸化炭素CO2 5.60L中の二酸化炭素分子   

() 塩化水素HCl 67.2L中の塩化水素分子  () アンモニアNH3 67.2L  ()  硫化水素H2S 11.2L

 

() 5.6L () 56L () 2.8L () 0.40L () 0.25L () 1.5×1023

() 1.8×1024個 () 51g () 17g

 

気体の密度と分子量

 単位体積(1L)あたりの質量を〔 密度 〕(g/L)という。気体の密度は標準状態では,1molの質量(=分子量g)と1molの体積(=22.4L)から次のように求まる。

   「分子量」g ⇔ 1mol ⇔ 22.4Lより

密度 = 分子量/22.4

 

例題 次の各問に有効数字2桁で答えよ。

(1) 窒素N2の標準状態における密度を求めよ。N14  (2) 標準状態での密度が1.5g/Lである気体の分子量を求めよ。

 

(1)  N2 1mol ⇔ 14×228g ⇔ 22.4L より,密度 = 2822.4 = 1.25 ≒ 1.3g/L

 (2) 分子量をxとすると, 1mol ⇔ xg ⇔ 22.4L より,x22.4 = 1.5 ,x = 33.6 ≒ 34

 

空気1molの質量と体積

 空気は窒素N280%,酸素O220%の混合気体である。空気1molの質量(空気の分子量)は次のように求められる。また,気体1molの体積は種類に関係なく標準状態では22.4Lなので,1molの空気も22.4Lとなる。 N14O16

  空気1mol = 窒素0.80mol + 酸素0.20molより,

  空気の分子量 = 14×2×0.8016×2×0.20 = 28.8

 

例題 

次の() () から,同温,同圧で空気より重い気体をすべて選べ。ただし,空気は窒素N2と酸素O241の混合気体とする。H1.0 C12 N14 O16 S32

() CO2 () H2 () H2S () NH3 () CH4 () C3H8

 

 空気も(ア)〜(カ)も1mol22.4Lで同じなので,1molの重さ(分子量)で比較

 28.8を超えるもの

 () 44 () 2.0 () 34 () 17 () 16 ()44  ()()()

 

【溶液の濃度】

溶液

 食塩水は食塩が水に溶けたものである。食塩水のように物質が液体に溶けたものを溶液という。このとき,液体に溶けた物質を〔 溶質 〕,物質を溶かしている液体を〔 溶媒 〕という。食塩水の場合,〔 食塩 〕が溶質で〔  〕が溶媒になる。

 

質量パーセント濃度[%

 溶液中の溶質の質量の割合を百分率で表したものが質量パーセント濃度である。

 
 

例題 次の各問いに答えよ。答えは有効数字2桁で解答せよ。


(1) 塩化ナトリウム25g100gの水に溶かした水溶液の質量パーセント濃度は何%か。

(2) 質量パーセント濃度が20%の塩化ナトリウム水溶液を120gつくるためには,溶質と溶媒はそれぞれ何g質量か。

 

 (1) 25(25100)×100 = 20〔%〕

 (2) 溶媒をxgとすると,x120×100 20より,x24g〕。よって,溶媒=1202496g



モル濃度[mol/L

 溶液1L中の溶質の量を物質量〔mol〕で表した濃度がモル濃度である。

 

例)5.85gNaClを水に溶かして100mL の水溶液にした(NaCl58.5 

 
 

例題 次の各問いに答えよ。答えは有効数字2桁で解答せよ。

(1) 水酸化ナトリウムNaOH 2.0gを少量の水で溶かした後,水を加えて200mLの水溶液にした。この水溶液のモル濃度は何mol/Lか。H1.0O16Na23

(2) 0.40mol/Lのアンモニア水が250mLある。この水溶液の溶質の物質量,質量,をそれぞれ求めよ。H1.0N14

 

 (1) NaOH=40 1mol40g)なので,2.0g2.040mol〕,体積は200mL0.200Lなので,

   モル濃度 = (2.040)×(10.200)0.25mol/L

(2) 物質量をxmolとすると,250L(=0.250L)なので,x0.2500.40 x0.10mol/L〕。

   NH3171mol17g)なので,0.10molは,17×0.101.7g



例題

質量パーセント濃度が98%の濃硫酸H2SO4(密度1.8g/cm3)のモル濃度は何mol/Lか。答えは有効数字2桁で解答せよ。H1.0O16S32

 

ol/L(濃硫酸1L中のH2SO4mol)なので,濃硫酸1L(=1000mL1000cm3)で考える。このとき,密度がcm3を使っているのでcm3にする。

濃硫酸1L1000cm3)の質量を求める。濃硫酸の密度(1cm31.8g)なので,1.8×1000g〕。

  このうち,98%がH2SO4なので,濃硫酸1L中のH2SO4の質量は,1.8×1000×0.98g〕。

  これを物質量にすると,濃硫酸1L中のH2SO4molになる。H2SO4981mol98g)より,

     1.8×1000×0.98×19818mol/L

 

【溶液の調製】

 目的の濃度の溶液をつくる(調製する)には,既知の濃度の溶液をホールピペットやメスフラスコといった器具を用いて希釈する。

 

希釈後のモル濃度= 1.0×10/1000.10mol/L

      10mL100mLに薄めている(10倍に薄めている)

 

演習問題 次の各問いに答えよ。答えは有効数字2桁で解答せよ。

(1) 水酸化ナトリウムNaOH 8.0gを水に溶かして250mLとした水溶液のモル濃度は何mol/Lか。H1.0O16Na23

(2) 質量パーセント濃度が28%の濃アンモニアNH3水(密度0.90g/cm3)のモル濃度は何mol/Lか。H1.0N14

(3) モル濃度が12.0mol/Lの濃塩酸HCl(密度1. 2g/cm3)の質量パーセント濃度は何%か。H1.0Cl35.5

(4) 6.0mol/Lの濃硫酸に水を加えて,1.0mol/Lの希硫酸500mLをつくるには,濃硫酸は何mL必要か。

 

 (1) 0.80mol/L〕  (2) 15mol/L  (3) 37% 

(4) 83mL (水を加える前後で,溶けている硫酸のmolは変わらない。)